マックの店員に恋をした
もうダメだ。完全に心を奪われた。
四六時中、そのコのことばかりを考えてしまう。
初めて見かけたのは土曜日の昼間。
入ったばかりで初心者マークを付けて、後ろにはベテラン風の店員が見守る中、テーブル拭きを教わっていた。
次に見かけたときは平日の午後。レジの中にいて、注文を取っていた。
標準語にところどころ訛りがある。
関西弁を押し殺しているものの漏れてしまっているのが印象的だった。
目つきが悪く病的にも見える。痩せているので尚一層。
化粧をしていなく、恐らくイケてるグループとは無縁で育ったのだろう。
愛想は一切なくマシーンのような対応。
慣れていないのだろう挙動はあくせくしている。
20そこら?見た目は若い。
違う日にマックに訪れたときは平日の夜だったが、彼女がいた。
もう開き直ったのかコテコテの関西弁で対応していた。
最初は大学生かなにかかと思ったが勤務日が多いのと時間もまばらなことから、その線はないだろう。
関西から来た一人暮らしのフリーター・・・だと読んでいる。
でもなぜ・・・?
こうなったらもう気になって仕方ない。
なぜ関西から浦安に来ているのか。
ここでバイトしている以外は何をしているのか。
何か夢ややりたいことがあるのか。
見た目は決して派手じゃないがブスでもない。
化粧で大化けしそうだ。
いや、外見は自分にとってどうでもいい。
彼女の生きざまが気になって仕方ない。
無理にでもマックに寄るようになった。
彼女がいるとホッとするし、彼女がいないと寂しい。
できれば仲良くなりたいけど、彼女は簡単に人に心を開かないタイプだろう。
前に彼女がゴミコーナーの回収をしていたとき、ナプキンを取りに寄ると察してくれたのか取ってくれた。なぜか5枚くらい。
笑いながら「1枚で大丈夫です。ありがとうございます」と言うと、一切目を合わせず、またニコっとすることもなく機械的に「ありがとうございます」とだけ言った。
コミュ障なんだな、きっと。
深夜0時に浦安駅前を歩いていたときに、仕
彼女の私服を見たことがある。事終わりであろう彼女が向こうから歩いてきた。
向こうも俺に気づいてハッと表情を一瞬見せたが、すれ違いSEIYUに入っていった。
真ん中分けのショートカット、モコモコの大きいジャケット、履き古した感のあるジーンズ、ニューバランスのスニーカー。
地味でダサい。ファッション誌になんて持ってもいないし読みもしないのだろう。
なぜ彼女を好きになったのか。
多分、自分と似ているんだと思う。
言葉では説明できないが、同じ人間。
生まれた場所は違えど根本的な部分で共通していると思う。
そしてそんな自分と同じ人間が関西から浦安に来て何をしているんだろうという莫大な興味が自分の胸を熱くしている。
性の対象にもならないし、ファッションも俺の理想とは違う。
だけど気になって気になって仕方ない。
これが本当の恋なんだろう。